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Argus-eye  アーガス・アイ 1月号2009年
発行:社団法人 日本建築士事務所協会連合会
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 Sciene No.10
昔の気配漂う月島の路地
         東京都中央区月島3丁目界隈


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 僕は、絵を描く時、山や川の風景よりも、身近な町中の風景の方が多い。山や川の美しさは、見るだけで仕合せな気分になって、絵を描きそびれてしまう。結局、描くものは生活のにおいのする家並みとなってしまう。
今回は銀座の路地を描こうと思った。若い時、銀座でサンドイッチマンをしていたから、どの路地も知っていた。今度歩いてみると、路地は様変わりしていた。ビルに挟まれた路地は高い塀に挟まれているようで、人の住む気配はない。ビルが頭上に被さり、空の見えない路地もあった。看板は昼でも明かりが灯り、洞窟を歩いているようだった。けもの道のように、人がやっとすれ違える小道や、自動車の入り込めない狭い道を路地だと思っているが、空の見えない路地は異質だと思った。
 隅田川を渡った佃、月島は、ひと昔前の風景が色濃く残っている。訪ねてみた。佃は変わった所もあったが、景観保存地区のように路地は昔のままだった。路地には懐かしい匂いがする。植栽が植えられ隣り合った家々からは暖かな声も聞こえてくる。
 月島に廻ってみると、通りはもんじゃ焼きの店が軒を並べ、路地も昔の気配だった。しかし、ひとつ、ふたつ、路地の途中から切り取られているのもある。裏に廻ると、大きなビルが建つのか、広い更地が幾つもあり、開発の足音が聞こえてくる。今描き残さないと消えてしまう。月島を描くことに決めた。                                            孝史
 
by enpitsu01 | 2009-01-12 00:44 | Argus-eye(アーガス・アイ)


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